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さかさま

ジトジト雨降り、ボーっと窓の外を眺めていた時。ふと焦点を手前に合わせると雨粒の中に浮かぶさかさまの世界が。
よくみると細かくこちらの世界の建物が再現されている。雨粒の中のくせになかなか精巧だ。
ガラスにぶつかった雨から次々こちらの世界の複製が生まれる。
ひとつひとつは別の世界なのだろうか。それとも分割されて映しだされているだけなのか。
あちらの世界の住人はさかさま語を話すから、聞き取れても理解するのが難しい。
靴下を頭に乗せて帽子に乗って空を飛ぶのだ。
でも暮らしているのは地上で、それは水中だと息ができないから。
いつか国の長が「さかさまの世界である以上徹底すべき」と声を上げたことがあったらしいが、1ヶ月の実践で不可能が立証された。
1ヶ月もそれを続けたことに驚きだが・・・・
そしてその頃から世界の寒冷化が始まった。
あまい海の水は端から徐々に氷が蝕み、今では全てを覆ってしまった。
それを見てこどもたちは「かき氷だ!」なんて喜んで破片をかじっていたらしいが。
大人たちはそれがどれほど汚いのかを知っている。
そういえば空から降ってくる雪をコップに集めて溶かしてみなさいと言われたことがあったっけ・・・・それはさかさまとて同じなのだな。
あちらでは元から地面から湧くものなので、誰も食べようとはしないらしい。パウダースノーなんてのは最初の一瞬しかないということだ。
どちらにせよ汚いことに変わりはないのだが。

信号が青に変わる。左手から出される指令にワイパーが世界たちを一掃する。
視界は良好だ。
生しらす丼を食べにいこう。

「さかさま」への1件のフィードバック

  1. 良い内容なブログですね。
    心がほっこりしてくるような。 それでいて現実はシビアだと
    酒井さん ありがとう(⌒∇⌒)

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