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剣戟映画のすすめ

剣戟(けんげき)映画とはいわゆるチャンバラ時代劇映画のことです。

今年の夏から急に戦前の古い映画を漁り始め、無声映画まで辿り着いた時に見つけたのが
史上最高のチャンバラ映画と言われる「雄呂血」(1925年)でした。もう100年近く前の映画です。
たまたまアマゾンプライムビデオで見つけたのですが、1970年代に再公開されたバージョンで活弁が付けられていました。
すごい胸糞な話なのですが、活弁のおかげでテンポがよく、
100年前という古さを感じずに最後までサクッと観ることができました。

主演は剣戟王と呼ばれた時代劇の大スター、阪妻(バンツマ)こと阪東妻三郎。
田村正和のお父さんです。当時23歳で、めちゃくちゃ美しい。1人だけ光り輝いていました。

内容はといえば、正義感が強すぎる不器用な若侍が、様々な不運に見舞われ、濡れ衣も着せられ、
見ていて気の毒なくらい惨めな思いをします。
やがて屈辱が積もりに積もって大爆発し、たった1人で大勢の役人を相手に大乱闘するという展開なのですが
まるでランボーのようであり、ジョーカーのようでもあります。

公開当時は大正デモクラシーな世の中。民衆が自らの力で権利を勝ち取ろうと奮闘した時代だということを考えると、
観客は主人公に同情し、共感しただろうと思うのです。
このようなカタルシスは今の時代にも通用するものだと思います。私も心を打たれました。

ラスト20分あまりがチャンバラのシーンなのですが、これが正気の沙汰ではない。
ワンカットが長い長い。動きに迷いもない。
100年前の映画人たちの気迫、情熱を感じました。技術が未発達の中でこれだけのものが作られていたとは。
日本映画は当時既に高いレベルに達していたことがわかりました。

お盆に帰省した際、CSの時代劇専門チャンネルでこの雄呂血の4Kリマスタープロジェクトというのをやっていて、
鮮明に修復された本作を観たのですが、これがこの上なく感動的な体験でした。
もちろん白黒ではあれど、昨日撮りました?と思うくらいにはクリアになっていて、
速度も自然に見えるように調整されているではありませんか。阪妻が生きている…!
もちろん当時は生きていたんですけども、より生命を感じたのです。

すっかり阪妻と戦前の時代劇にハマってしまい、今いろいろと開拓しているのですが本当にどれもすごいです。
プライムビデオでも観られる「血煙高田の馬場」とかはあまりにも殺陣がエキセントリックで10回くらい観ました。

古い時代劇、取っ付きにくいようですが観てみると面白いです。新しいジャンルを開拓したい方にはぜひおすすめいたします。

(営業・N)

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